双眼鏡は手軽さが魅力で、思いのままに星空を探索できます。肉眼では見ることのできなかった暗い星を見ることができたり、大型の星雲や星団を観測したり、何かと活躍の場は多いでしょう。たとえ天体望遠鏡をお持ちの方でも、天体の位置を確認するなど補助的に使用するケースも多いはずです。天体観測を始めるなら双眼鏡を1台購入しておいて損はありません。また、選び方によっては、一般の用途にも使用することができます。ここでは主に、天体観測で利用することを前提にした双眼鏡の選び方を紹介しましょう。一部ではつるちゃんの私見も入っていますから注意してください。
双眼鏡の購入は天体観測用の双眼鏡を買っちゃおうからどうぞ
双眼鏡は天体望遠鏡と違って、高い倍率を出すことができません。したがって、木星の縞模様や土星の環、迫力ある月面のクレーターを観測することはできません。ですから、こういった月や惑星などの天体を思い浮かべて購入すると、完全に失敗です。ここでは何を目的に購入するのかをハッキリさせておきましょう。
双眼鏡は肉眼ではちょっと見づらい星を見つける手助けをしてくれたり、大型の星雲や星団の存在を確認することができます。といっても天体望遠鏡ではありませんから、あくまでも存在を確認するための道具だと割り切りましょう。そういう意味で双眼鏡は、天体観測に向いているとは言えないかもしれません。
でも、双眼鏡を使って夜空を眺めていると、視野に飛び込む星や天体の数が増えますから、宇宙を探索している雰囲気を味わうことができます。きっと夜空の美しさを再認識されることでしよう。また、両目で見ることにより立体感が生まれ、自分が宇宙を浮遊しているような気分になれるのです。宇宙との一体感。実感する星空の美しさ。これこそが双眼鏡を使った天体観測の醍醐味ではないかと思います。
ここで、天体望遠鏡ではなく、あえて双眼鏡を選ぶ理由は何でしょうか。先にも書いたように、本格的に天体観測をしたいのであれば、天体望遠鏡を購入されることをオススメします。しかし、移動や設置などの面で時間と労力を要しますから、少しハードルが高くなるのも事実です。しかし双眼鏡なら持ち運びが楽な上に、サッとケースから取り出して、すぐに天体観測を始めることができます。
「もっと気軽に星空を楽しみたい」、「肉眼よりもたくさん星を見てみたい」といった、もっとリラックスした気持ちで天体観測を楽しみたいという方もおられるでしょう。そういう方にオススメしたいのが双眼鏡なのです。あなたはこの目的に合っていますか?
以降では双眼鏡を選ぶ際に必要な事柄をひとつずつ説明していきましょう。
口径とは双眼鏡の前面に配置された対物レンズの大きさのことです。口径が大きいほど、より暗い天体が明るくハッキリと見えます。また、細かい物を分離する能力も高くなります。天体観測を考えるなら、迷わず口径が大きなものを選びましょう。しかし、口径が大きくなりすぎると重たくなるので取り回しが難しくなり、手軽さというメリットが薄れてしまいます。
倍率は使用目的によって違ってきます。天体の位置を確認したり気軽に眺めたりするのが目的の場合は、広い視野を確保できる10倍くらいまでの低い倍率を選びます。星雲や星団といった特定の天体をじっくりと観測したい場合は、少し高いめの倍率がよいでしょう。といっても10倍を超えてくると手ブレによって視野全体が揺れて、観測しづらくなってきます。三脚などへ固定する方法も考えておきましょう。
それから、100倍もの倍率が出せるような広告を見かけます。確かに広告自体はウソではありません。しかし実際に使ってみると、視野が狭くなるとともに像が暗くなり、しかもピントが合わなくなってきます。こうなると、「ほとんど使い物にならない」と言っても過言ではありません。最初に購入される双眼鏡の倍率は、せいぜい15倍くらいまでにとどめておきましょう。
双眼鏡にはいくつかの形式があります。そのうち代表的なものを紹介しましょう。多くの場合、ポロプリズム式を選ばれることになるのではないでしょうか。
ポロプリズム式
まず紹介するのがポロプリズム式です。ポロプリズム式は最もよく使われる形式で、対物側と接眼側に凸レンズを配置し、2個以上の直角プリズムを用いて正立像を得るものです。製造しやすくて大口径が得やすいので、最も普及している形式といえます。構造上、双眼鏡の一部に出っ張りができてかさばることや、重たくなるのが欠点です。天体観測用として優れたものが多く、最初の一台としておすすめします。
ダハプリズム式
まず紹介するのがポロプリズム式です。ポロプリズム式は最もよく使われる形式で、対物側と接眼側に凸レンズを配置し、2個以上の直角プリズムを用いて正立像を得るものです。製造しやすくて大口径が得やすいので、最も普及している形式といえます。構造上、双眼鏡の一部に出っ張りができてかさばることや、重たくなるのが欠点です。天体観測用として優れたものが多く、最初の一台としておすすめします。
ガリレオ式
ガリレオ式は対物側に凸レンズ、接眼側に凹レンズを配置します。プリズムを使用しないため、軽量で簡単に製作することができます。安価なオペラグラスなどで用いられますが、視野が狭い上に像の歪が出やすいので、天体観測用としては避けた方が無難です。
重たい双眼鏡を使用する場合、三脚などへ固定する必要がでてきます。特に天体観測の場合、上を向いた無理な姿勢で使用することが多くなりますから、軽いに越したことはありません。当然個人差はありますが、手持ちで使用できる限界は、1000gから1300gくらいの重さを目安にすればよいと思います。短時間の観測であれば、これより重くても手ぶれは少なくてすみます。手に持った時の感触などを含め、店頭で実際に確認できればベストです。
実際にどれだけ広い範囲を見渡すことができるかを数値で表したもので、単に視界とも呼ばれます。通常は角度の度で表されますが、1000m先で見渡せる幅をmで表すこともあります(1000m先視界といいます)。
もちろん視界は広い方が良いのですが、視界の平坦性が失われたり、視野の端の星像が乱れることがあります。7倍の双眼鏡では6度から7度、10倍では4度から6度くらいが一般的です。もちろん、補正を行ってこれよりも広い視界を実現した双眼鏡もありますが、割高になってしまいます。
視野がどの程度開けているかの角度を表します。見かけ視界が広いと、同じ倍率でも、より広い実視界を得ることができます。実視界と見かけ視界の関係を示す単純な略算式は次のとおりです。
しかし最近は、より正確な関係を示すJIS規格の計算式が使用されるケースが多くなっています。
双眼鏡の明るさを示す指標のことで、射出ひとみ径ともいいます。対物レンズを明るい方へ向けた時、接眼部に小さな丸い像が見えますが、この丸い像が射出ひとみです。ひとみ径は次の式で計算することができます。数値が大きいほど像が明るくハッキリと見えます。特に天体観測ではこの数値が大きい方が有利です。
例えば7倍、50mmの場合だと、ひとみ径は7.1mmとなります。人間の瞳は真っ暗闇で最大7mmまで開くと言われていますから、天体観測用で用いる場合、7mm前後が良いとされています。しかし、都会の明るい夜空で使用するのであれば、5mmくらいでも問題ありません。
先の計算式を見るとわかりますが、倍率が高くなるほどひとみ径が小さくなります。したがって像が暗くなりますから、あまり倍率が高いものはおすすめできません。
接眼部から次第に目を離していったとき。どれだけ離れた位置まで視界全体を見渡すことができるかを、ミリ数で表したのがアイレリーフです。アイレリーフが短いと、接眼レンズに目をこすり付けるようにしないと視界全体を見渡すことができず、使い勝手が悪くなります。特に眼鏡をかけたままのぞく場合は重要です。ですからアイレリーフが長い双眼鏡ほど、使い勝手が良いと言えます。通常は12mmから15mm程度を目安にすると良いでしょう。眼鏡をかけて見られる方は最低でも20mmくらい欲しいところです。
光がレンズを通過するとき、レンズの表面と裏面それでれで光が反射します。このため、レンズを通過する光量が減少しますし、反射光によって、ゴーストやフレアといった現象を引き起こし、像が悪化します。これを抑えるのが、レンズに施されたコーティングです。
単一の膜による単層コーティングでも効果がありますが、良い双眼鏡は何重にもコーティングがされており、多層膜コーティングやマルチコーティングとよばれています。高級機になるとプリズムもコーティングされていることもあります。天体観測で使用する場合は多層膜コーティングのものをおすすめします。
双眼鏡を手に取ってみましょう。そして景色をレンズで反射させてみてください。映り込んだ景色がハッキリしないものは、優秀なコーティングがされている可能性が高いといえます。
いわゆる手振れ補正機能付き双眼鏡です。かなり価格が高くなりますが、手振れが解消されますから天体観測では威力を発揮します。予算が許すという方は、ぜひ積極的に購入を検討していただきたいと思います。
これが一番大事かもしれません。双眼鏡の値段はそれこそピンキリで、高価なものでは100万円を超えるようなものまで市販されています。反対に安価なものもありますが、あまり激安品はお勧めしません。品質にバラツキがあって粗悪品であることも多いからです。天体観測では品質が要求されますから、「安物買いの銭失い」にならないとも限りません。総じて言うと、全ての性能や品質は価格に織り込まれています。逆に言うと、掘り出し物はなかなか見つかりません。
双眼鏡本体には、必ず 「7×50 6.3゜」 といった数値が書かれています。これは倍率が7倍で口径が50mm、実視界は6.3度であることを意味しています。覚えておきましょう。
こんな双眼鏡には手を出さないようにしたいという注意点を挙げておきましたので、実際に選ぶときの参考にしてください。
激安な双眼鏡
相場を外れた激安品が多く見受けられます。これらは多くの場合、天体観測用には不向きです。口径や倍率、視界などの数値だけでは表せない品質面で劣るものが多いからです。天体観測用に使用する場合、出来上がりの精度が求められますから、粗悪品をつかまされないようにしなければなりません。粗悪品の例をあげると、光軸が合っていない。レンズの研磨精度不足。光学設計の甘さ。コーティングの悪さ。数え上げればきりがありません。これらの結果、なんとなく星像がボケたりピントが合わなかったりして視界全体がスッキリせず、満足できない天体観測を強いられてしまいます。
倍率の高い双眼鏡
倍率が高すぎるのもいただけません。手持ちで観測できるのは10倍くらいまで。それ以上だと三脚などに固定する必要が出てきます。それでもせいぜい20倍までで、それ以上だと実際に観測するのは難しいでしょう。しかしも倍率が高くなると像が暗くなって、目標とする天体を確認することが難しくなります。特に高倍率が必要ないのであれば、初心者の方は7倍か10倍の倍率を選ぶと失敗が少なくなります。
知らないメーカ
聞いたこともないようなメーカの双眼鏡が多数出回っています。中には優秀な物もあるかもしれませんが、ババつかみになる可能性の方が高いでしょう。やはりここは信頼できるメーカ製を選びたいところです。下におすすめのメーカをあげておきましたので参考にしてください。
悪いコーティング
光の乱反射を抑えるために、普通はレンズの表面にコーティングが施されています。しかしこのコーティングがあだになることもあります。コーティングにムラがあったり、特定の波長を持つ光がレンズを通過することができなくなったりして、像や視界全体に色がつくことがあるのです。対物レンズや接眼レンズを横からのぞくと、派手な色に輝いたり縞模様が見えることがありますが、この手の双眼鏡は避けておいた方が無難です。それから、コーティングが施されていないような物は論外と言ってもいいでしょう。
双眼鏡はできれば店頭で実際に手で持ってチェックしてみたいところです。もし可能でしたら、次のような点を確認されるとよいでしょう。
双眼鏡を少し離して明るい方へ向けてみましょう。この時点で次のようなものはダメ。
- 接眼部(目を当てる部分)の像が丸でなく欠けている
- 接眼部の端のほうで三日月形や半月形に光って見える
対物レンズと接眼レンズに、それぞれ斜めから光を当ててみます。次のようなものは避けましょう。
- 光が多く反射し、映り込んだ景色がハッキリわかる
- 派手な色に光が反射したり、縞模様ができたりする
- 光を当てる角度によって次々と色が変わる
左右の接眼部を自分の目幅に合わせてから遠くの景色を見てみます。両目のピントを合わせた時点で次のようなものは避けましょう。
- 視野全体または一部がベールのようなものに覆われているような気がする
- どことなく鮮明でない
- ハッキリ見えるところと見えないところがある
- 視野の端の方がチラチラする
- 視野の端の方で色がついて見える
他には次のような点もチェックしましょう。
- 倍率が自分の目的にあっているか
- 視野の広さは十分か
- 持った時に手になじむか
- 重くて手ブレを起こさないか
いろいろと書いてきましたが、初めて天体観測用の双眼鏡を購入されることを前提にすると、次のスペックを持った双眼鏡をおすすめします。あとは視界の広さやメーカの信頼性、そして価格との相談ですね。
オススメ順位 | 倍率 | 口径 | コメント |
---|---|---|---|
1位 | 7倍 | 50mm | 天体観測の入門用として一番オーソドックス |
2位 | 10倍 | 50mm | 夜空が明るい場所で使用される場合はこちらがベスト |
3位 | 10倍 | 70mm | 予算が許せばこれが良い |
4位 | 8倍 | 35mm〜40mm | 手軽に天体観測用として使用し、それ以外にも多目的で使いたい方 |
双眼鏡メーカの特級品はニコン、カールツァイス、フジノンといったところですが、これらのメーカ品はどうしても値段が高くなってしまいます。お金を出せば高級品が手に入るのでしょうが、初心者の場合、一番大切なのはコストパフォーマンスではないでしょうか。安い割には品質も意外といい。そういう意味で初心者の方におすすめしたいメーカとして、ビクセンとミザールをあげたいと思います。
オススメ順位 | メーカ | コメント |
---|---|---|
1位 | ビクセン | 初心者の方に一番オススメしたいメーカ。ラインナップも豊富で選びやすい。 価格がおさえられているわりに使える双眼鏡 |
2位 | ミザール | 天体望遠鏡も製造する老舗の日本メーカ。ビクセンでもまだ高いという方にオススメ |
3位 | ニコン | 視界の平坦さや星像の鋭さなどで天文マニアに定評がある。高価なのが残念。 |
双眼鏡といってもメーカはたくさんあるし機種も多彩。一体どれを選べばいいの? そんな方が多いかもしれませんね。そこで、つるちゃんが初めての方へ特にオススメしたい、コストパフォーマンスの良い天体観測用の双眼鏡を選びましたので参考にしてください。(YAHOO!ショッピングを開きます。)
ビクセン アスコット ZR7×50WP |
ビクセン アスコット ZR10×50WP |
それでは双眼鏡選び、がんばってくださいね!