晩秋から初冬の頃、宵の北東方向からカペラが昇ってきます。12月頃なら北東または東の空で高い位置で黄色に輝いています。カペラはぎょしゃ座の1等星で、ぎょしゃ座が作るつぶれた五角形の一角を担っています。
星名 | 学名 | 星座 | バイヤー符号 | フラムスティード番号 | 赤経 | 赤緯 | 実視等級 | 絶対等級 | 距離 | スペクトル型 |
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カペラ | Capella | ぎょしゃ座 | α星 | 13番 | 05h16m41s | +45゜59’53” | 0.08等 | −0.51等 | 42.8光年 | G0 |
カペラは1等星の中では最も北寄りに位置しています。そんなこともあって、日本などの北半球からはカペラを目にする機会が多くなります。カペラの赤緯は+46度ほどですから、北緯44度よりも北の地域では1日中沈まない周極星となります。
東京で時刻を21時に固定しましょう。細かいことを無視すると、カペラは9月2日から北東の空に見え始めます。そして北西の空から見えなくなるのは6月8日です。つまり東京からだと、9ヶ月以上にわたってカペラを見ることができることになります。 ※年によって日付が異なることがあります。
カペラはラテン語のカプラからきており、「小さな雌やぎ」という意味です。ギリシャ神話では大神ゼウスの幼少の頃にゼウスに乳を与えたマルティアという雌やぎです。星座絵で見るとカペラは馭者が抱えた雌の子やぎの部分に位置しています。
ぎょしゃ座のα星はアラビアでは、アル・アイユークとよばれています。これは男性がおしゃれであることを指す言葉です。10世紀ブワイフ朝時代に活躍した天文学者スーフィーによる「星座の書」では、ぎょしゃ座付近にはおしゃれな男性像が描かれています。そしてα星のカペラは男性の左肩、β星のメンカリナンは右肩に位置しています。
カペラが1等星だと言っても、正確な明るさは0.1等星です。これは全天で6番目の明るさで、1等星よりもワンランク明るい0等星に分類されます。その理由として、太陽から42光年という比較的近い距離にあることがあげられます。
カペラは黄色にキラキラと輝きます。これは次に書くように、連星を形成する二つの星の表面温度が、5000度と5700度であることによります。このくらいの温度の星は黄色に見えるのです。お隣のおうし座にある1等星アルデバランはオレンジ色をしていますから、見比べてみると面白いでしょう。
カペラはウィルソン天文台の望遠鏡に、干渉計という特殊な装置を取り付けて発見された、最初の連星です。カペラは天体望遠鏡で見ても1つの星にしか見えませんが、詳しい観測によると、0.7等星と1.0等星の2つの星が104日の周期で回りあっている連星です。主星は直径が太陽の12.0倍で、伴星の方も太陽の8.8倍もあって、いずれも巨星です。
これら二つの星が太陽と金星くらいの距離をおいて、互いにグルグルと回りあっているのです。しかし、両者が一番離れた場合でも角度にして0.05秒にしかなりませんから、たとえ大型の天体望遠鏡で見たとしても、2つの星に分離するのは難しいでしょう。黄色く穏やかに光って見えるカペラの実態は凄まじいものですね。
カペラはりょうけん座RS型の変光星です。この型は連星系によって星の表面で強い黒点活動が起こり、星の自転によって明るさが変わるという変り種です。数ある変光星の中で、このような変光星は少数派です。