2015年4月4日は全国で皆既月食が見られます。2014年10月8日に全国で皆既月食が見られたのが記憶に新しいところですが、このときは夕方から月食が始まりました。今回も似たような条件で、日没後に欠け始めます。昨年と大きく違うのは食分が
1.0 ということで、かろうじて皆既月食になります。このため皆既の時間はわずか12分間だけで、特筆すべき短さとなっています。それでは以降で詳しくみていきましょう。
※月食が起こる理由などの予備知識は月食の各ページをご覧ください。
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〜望月の蔭を抱いて花霞〜
写真と俳句の提供: 読者のブン太郎さん |
2015年4月4日に見られる皆既月食は、全国で開始から終了まで全経過を観察することができます。
肉眼でもわかる本影食の開始は19時15分です。この頃はまだ薄明中ですし、低い位置にあるため、少し見づらいかもしれません。しかし、どの地域も月食が進行するにつれて、高度が上がって見やすくなります。
食分が0.5を超えたころから月の色がなんとなく、くすみ始めます。20時54分には皆既月食が始まって、独特の赤黒い月を観察できるでしょう。いつもなら皆既の状態が1時間ほど続きますが、今回は長続きせず、12分後に元の姿に戻り始めます。
22時45分には地球の本影が月を通り抜けて月食が終了します。この後も半影食は続いていますが、肉眼ではわかりづらいでしょう。
下の表は今回見られる皆既月食の時間をまとめたものです。
部分食が見られるのは、19時15.4分から22時45.1分の3時間29.7分です。また、皆既は20時54.2分から21時06.4分で、12.2分間だけしかありません。最大食は21時ちょうどで、覚えやすい時間となっています。
全体として、昨年10月に続いて夕暮れ後の見やすい時間帯に起こることから、小さな子供さんでも楽しめそうですね。
半影食の始まり |
4月4日 17時59.7分 |
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部分食の始まり |
19時15.4分 |
皆既の始まり |
20時54.2分 |
食の最大 |
21時00.2分 |
皆既の終わり |
21時06.4分 |
部分食の終わり |
22時45.1分 |
半影食の終わり |
4月5日 00時00.8分 |
最大食分 |
1.005 |
月食は日食と違って、時刻が同じであれば月が欠ける割合は、日本全国どこから見ても同じです。観測する場所によって、欠ける方向が多少異なりますが、国内であればそれほど大きな違いはありません。
下の図は、月がどのように欠けていき、そして復帰するのかを、前半と後半に分けて示したものです。最初は月の下側から欠け始めます。時間がたつにつれて欠け方が大きくなるとともに、欠ける方向が右下側に変わっていきます。
食分が0.5となり、直径の半分が欠けた状態になるのは、19時53分ごろです。これを過ぎた頃から月全体が、少しずつ赤黒くなってきます。
食分が0.9を超えてくるのは20時33分ごろです。この頃になると月の左上だけが光ります。普段見られる三日月とは違った形をしており、月食でしか見ることができない独特の欠け方です。その後は光る部分がますます小さくなり、20時54分に皆既月食が始まります。
東京で前半の欠け方(15分間隔)※下側から欠け始める。最後に細く光った左上部分がなくなると皆既月食が始まる。 |
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皆既中も地球本影から端の方はほんのり明るくて、月がまだ光っているように見えます。この状態は12分間だけしか続きません。皆既が終わる21時6分になると、月の左からやや上の方が、はっきり光り始めます。これ以降は、左側が光って右側が欠けた状態が最後まで続きます。しいて言えば、光る方向は少しずつ下の方へ移っていきます。
22時7分ごろには食分が0.5となり、半分だけ欠けた状態まで戻ります。以降も満月の丸さを取り戻していきます。最後は月の右端から地球の影が抜けて、22時45分に月食が終了します。
後半の欠け方※復帰は左側のやや上方向から始まる。最後は右端から地球の影が抜けて終了。 |
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開始、最大食、終了の際に、東京で見える位置と空の状態を図示します。ご覧のように東南東の空、低い位置での開始となります。月食の進行とともに月は右上方向へ移動していき、南南東の空の中ほどで終了します。当日は東から南の方角に注目しましょう!
別ページで日本各地で見える位置|2015年4月4日の皆既月食も用意しましたので参考にしてください。
東京で月食が始まる頃に月が見える位置※開始の頃は東南東の空で低い位置に見える。日没から1時間10分たったが、空はまだ少し明るい。 |
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最大食の頃※皆既月食中は南東の見やすい位置。満月の強烈な光がやわらいで、星座も見える。 |
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終わる頃※南南東の空の中ほどで終了。夜空が満月に照らされて、星座は見づらくなった。 |
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下の図は、月が地球の影を通る経路を示したものです。月は影に対して西から東(図では右から左)へ動き、本影(赤い丸のエリア)の北側を通過します。最大食のころは本影の内側をかすめるように通過し、ギリギリかろうじて皆既月食になることがわかります。
本影を通る月の経路 |
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当日は、東から南の方向が開けた場所からご覧になってください。特に月食の始まりごろは、東南東の方角で低い位置に見えます。東から南東の方角が低空まで見渡せるような、ビルの屋上や小高い丘の上などがよいでしょう。
次のような点に注意して皆既月食を楽しみましょう。
欠け際に注目
日食とは違い、欠けぎわを肉眼で見てもぼやけてはっきりしません。これは地球の大気によって太陽光が分散し、地球の影の境界がはっきりしなくなるためです。欠け際を見ていると、大気を持った地球の影が月に映し出されていることが実感できるのではないでしょうか。
色の変化
月食中に見られる月の色は、普段と違います。食分が小さなうちは普段とあまり変わりませんが、食分が0.5を超えたあたりから、次第に赤味を帯びてきます。そして、皆既となる頃にはオレンジ色や赤銅色、または赤黒く変化して、なんとも言えない美しさです。といっても色は毎回異なり、オレンジ色から灰色まで、さまざまです。時間によっても変化しますから、色の違いを楽しんでください。
皆既中の月の明るさ
皆既中の月の明るさは毎回異なります。火山の爆発によって大気中にチリが大量にまき散らされたり、月が地球の影の中心に近いところを通ると、暗い月食になる傾向があります。
皆既中の月をよく見ると、本影の中心に近い側は暗くなり、反対側は明るくなります。今回は本影をかすめるような経路をとるため、皆既中でも明るい側は、光っているような印象を受けると思います。今回は大規模な火山爆発はありませんし、月が地球の影の端を通りますから、明るい目の皆既月食が見られそうです。
ブルーフリンジが見られる?
提供:関西天文同好会
芦田昌文さん 京都市
撮影:2014年10月8日19時14分前回の皆既月食で話題となったのが、ブルーフリンジ(または、ターコイズフリンジ、ブルーバンド)とよばれる現象です。これは、地球大気上空にあるオゾン層を通過した光が青味がかった色をしており、これが月面上に見られるというのです。地球本影の端のあたりに青味がかった帯が見られるか、確認してみましょう。写真撮影するとわかりやすいようですよ。
次回は2017年8月8日に4分の1欠ける月食があります。しかしこれは部分月食です。次回の皆既月食は、2018年1月31日に3年ぶりに全国で皆既月食となります。最大食は22時半ごろですから比較的見やすく、多くの人が楽しめそうです。
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2015年4月4日 月食図 世界のどのエリアで見えるか
※このページのシミュレーション画像は、「つるちゃんのプラネタリウム シェア版」のプラグイン機能「つるちゃんの日食ソフト」を使用しています。時間換算で1分程度以内の誤差を含みます。